医療脱毛のしくみ 脱毛原理をわかりやすく解説
医療脱毛とは、医療用レーザーを肌に当てて発毛組織を破壊する施術です。このページでは医療脱毛のしくみについて詳しく説明します。
この記事の監修医師
施術の様子
医療脱毛はレーザーを
肌に当てる施術
施術は医療脱毛専用の「レーザー脱毛機」を使っておこなう施術です。レーザー照射器を肌に当てて滑らせ、レーザーを満遍なく照射していきます。
医療施術ではありますが、針やメスのような器具は一切使わず、いわゆる手術のようなものではありません。施術体験はエステに近い感覚です。
施術の流れ
- 1施術室に入る
- 2服を脱いでベッドでうつ伏せになる
- 3タオルをかけて看護師さんを待つ
- 4看護師さんが入室
- 5レーザーの照射
- END
全身脱毛の所要時間は約60分、VIOや顔を含めると90分程度です。
医療脱毛の原理
脱毛レーザーの作用機序
医療脱毛は、肌に照射するレーザーの熱によって実現しています。
照射器から発射されたレーザーは、毛根にぶつかって熱を発生させます。その熱が周囲の発毛組織を破壊し、再発毛を阻止します。
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照射器から発射されたレーザーが毛根にぶつかり、毛根を加熱する。(レーザーは黒い色にぶつかると発熱する性質を持っている。)
レーザーとは
“単一波長の光”ですレーザーとは光の一種であり、“特定の波長のみで構成される光”のことです。
光にはいろんな種類があります。赤外線や紫外線などいろいろですが、違いは「波長の違い」。自然光はさまざまな波長の光が混ざっていますが、レーザーとは“特定の波長のみを抽出した光”のことです。医療脱毛レーザーは“黒い色
を加熱する性質”を持つレーザーはモノにぶつかると吸収され、熱を生じる性質を持っています。
そしてレーザーにはいろんな種類があり、「水分に吸収されやすいレーザー」「血液に吸収されやすいレーザー」など、波長によって特性が違います。
医療脱毛で使うレーザーは“黒い色によく吸収される(黒い色に熱を生じさせる)”という性質を持っています。逆にいうと肌の水分や血液には吸収されにくい性質をもっており、肌へのダメージを最低限に抑えながら、毛根周囲に効率よく熱ダメージを与えることができます。 -
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毛根で生じた熱が毛包に広がり、発毛組織(毛包幹細胞・毛乳頭)を加熱する。
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3
発毛組織(毛包幹細胞と毛乳頭の両方あるいはどちらか)が破壊され、毛は再生能力を失う。
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施術後3日~3週間ほどかけて毛根が抜け落ちる。また、毛穴も退縮して小さく目立たなくなる。
医療脱毛は
“毛を抜く施術”ではなく
“毛を生えなくする施術”です
よく勘違いされがちですが、医療脱毛は“生えている毛”をレーザーで破壊して抜く施術ではありません。もちろん抜毛効果が得られることもありますが、それは副次的な効果です。
医療脱毛とは“毛を抜く施術”ではなく、“毛を生えなくする施術”です。毛根はあくまで熱源。目標は再発毛の阻止であり、ターゲットは毛根周囲の発毛組織なのです。
ターゲットは
毛包幹細胞と毛乳頭
破壊ターゲットとなる発毛組織は2つあります。毛包幹細胞と毛乳頭の2種類です。現在のところ、このどちらか一方を死滅させれば永久脱毛は実現すると考えられています。
次の章では毛包幹細胞・毛乳頭それぞれの破壊による再発毛阻止の原理について、順に詳しく解説していきます。
毛包幹細胞の破壊による
再発毛阻止の原理
毛包幹細胞とはなにか?
毛包幹細胞とは、毛包の「バルジ領域」と呼ばれる部分に多く存在する幹細胞の一種です。分化によって毛母細胞に変化し、毛や毛包を構成します。一言でいうと毛包幹細胞は「毛と毛包の卵」です。
毛包幹細胞は
どうやって毛になるか?
毛包幹細胞は、毛が成長をはじめるタイミングで毛乳頭(後述)から増殖指令(TGFβ2シグナル)を受け取り、分裂・増殖します。
その後毛包幹細胞は「毛母細胞」へと分化し、メラニン(黒い色素)を取り込みながら角化して毛を形成していきます。
毛包幹細胞の破壊による
再発毛阻止の原理
前述のとおり、毛包幹細胞は毛母細胞へと分化して毛と毛包を構成する細胞です。この毛包幹細胞を死滅させることにより、将来毛となる細胞そのものがなくなって再発毛が阻止されます。
なお毛包幹細胞は自身の分裂によってでしか増殖することができません。それゆえ脱毛施術によってすべての細胞が死滅すると、その後再増殖できなくなり、永久に毛が生えてこなくなります。
仮にすべての毛包幹細胞が死滅しなかったとしても、その大部分が失われることで毛の再生スピードは極端に遅くなり、目立つレベルに毛が育つ前に抜け落ちるようになります。
毛乳頭の破壊による
再発毛阻止の原理
毛乳頭とはなにか?
毛乳頭は、毛根の最下部、「毛球」という部分にある楕円形の組織です。毛乳頭細胞は、毛包幹細胞に対してTGFβシグナルというたんぱく質を分泌し、毛包幹細胞の増殖・分化を促進します。
また毛乳頭は、毛包幹細胞から分化した毛母細胞に栄養を供給する役割も担っています。
一言でいうと毛乳頭は「発毛の司令塔」です。
毛乳頭の破壊による
再発毛阻止の原理
毛乳頭細胞は、毛包幹細胞(毛の卵)に対して増殖と分化を促す司令塔です。この毛乳頭細胞を死滅させることにより、毛包幹細胞への分裂指示(TGFβ2シグナルの産生)はおこなわれなくなり、毛根への栄養供給も途絶えます。これによって再発毛が阻止されます。
なお現在のところ「毛乳頭は一度破壊したら再び発生しない」と考えられています。
医療脱毛は
一度の施術で終わらない
医療脱毛は、一度の施術で毛がすべて抜けてなくなるわけではありません。満足のいく脱毛効果を得るためには必ず複数回の施術が必要です。
次のページでは、医療脱毛において複数回の施術が必要になる理由について解説していきます。
WEBで稀に「毛乳頭を破壊しないと生えてくる」との記載を見かけることがありますが、これは誤った情報です。毛の卵である毛包幹細胞を破壊すれば再発毛を阻止できることは多くの臨床から明らかになっています。
2024年3月現在においては、毛乳頭か毛包幹細胞か、どちらか一方を叩けば永久脱毛は可能とするのが一般的です。